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ひさね
2023-12-13 00:56:42
1969文字
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【急募】世界を滅ぼす呪い又は魔法
怪異と天使の会話。なんだか不穏!
「ね、貴方の永遠性を損ねて欲しいんです」
もこもこと青い髪を蓄えて、天使という存在にしては珍しく頭にも羽が生えている、名前を教えてはくれない彼女。その彼女の研究室と呼ばれる所で、始めてお願いをされたものだから、よく分からない感情が湧いて無い心臓が跳ねる。
「きみって、願い事とかする柄だったっけ?」
「基本的にしませんね。特に貴方の様な怪異には。対価が碌なものではありませんから」
「えー! 酷いぞ」
本やら資料やらオーパーツやらが床にも机にも積んである狭い部屋には椅子は小さい机に備え付けてある一脚しかない。それをぼくが使っているから、彼女は隣に立っている。
「だったら何で急にする気になったんだ?」
顔を見上げてみる。彼女は微動だにせず、淡々と口を開いた。
「色々行き詰まったから
……
ですね。永遠性があるとされている天使だというのに同僚がなんで死んだのかとか、悪戯心で太陽増やした誰かが見つからないとか」
彼女が見下ろしてきて、目がぱちりと合う。それからきゅうと目を細めて、口の端を上げた。貼り付けたような、腹に一物あるときの作り笑いだ。ぼくはそれが一等好きだったから思考が滞りそうになる。
が、彼女が抱えているその中身を知りたくもあったから努めて口を回す。
「わあ、全部ぼくのことだな。だからぼくに不利な願いを?」
「現実の問題はどうでも良いんです。ただ一つだけねだろうかな、と」
「犯人をどうこうしたい訳じゃないんだな。きみのことだから、あれか。不死性を失うメカニズムが目的か」
「そう。よく分かりましたね」
うっそりと、でも嬉しそうに口を三日月の形に近づけていく。彼女の感情と連動するように自分も嬉しくなってくる。多分、主導権を握られているけれど、でも今更どうでもよかった。
こくこくと頷くとふわりと頭を撫でられる。また不明瞭な感情が湧いて、今度は「わあ」と声になって溢れた。
「私から言っておいて憚られますけど、本当にやるつもりなんですね。もう少し抵抗されるかと」
「何でも叶えるのが売りだからな」
「
……
でも貴方に一方的に不利益な願いは信義則にもとるでしょう」
「えー。別に気にしないぞ」
「私が気にするので。
……
それに本命がもう一つあるんです」
彼女が声をひそめる。
これから、凄いことを言うのだと直観した。ぼくと彼女は根っこの部分が同じだから、きっとそうだと確信した。
「世界を滅ぼす呪い又は魔法が知りたい」
耳打ちされた言葉に目を見張る。鳥肌が立つ。無い心臓が破裂する様な錯覚を覚える。気分がふわふわとしてくる。これは、高揚感だ。最近知ったから、多分合っているはずだ。
「世界を滅ぼすってどういう風に」
辺りに転がっている本も道具も使えば、天災を起こすなり存在しないものを作るなりして、いくらでも滅ぼせるだろう。それは彼女もよく知っている。
知っている上で、願うのだからきっと確かめる必要もない。必要ないけれど。
保険はかけておくべきだから、逸る思考を抑えて、自分と同じ意思かを問う。
「本を閉じる様に、何らかの現象を通さず直接的に滅ぼす方法」
思わず、んはは、と笑いが溢れた。全然止まりそうもなかった。止めるつもりもなかった。
「分かってたでしょうに」
「すれ違うのは嫌だったんだぞ。それに、そういう無理難題は先に言うものじゃないか」
「だって、本命度合いで言えばこちらの方が上だったから。それに始めのも中々の難題だと思ったのですが」
「やり方が分かるのと全く分からないのじゃ雲泥の差があるんだぞ」
すると、彼女は目を丸くして、予想外というのも隠さずに「知らないこともあるんですね」とこぼした。
「じゃあ実質一択でしたか」
「どっちもやる」
「あら」と益々驚いたような顔になっていく。珍しいものを見た高揚感がぶわりと広がって目眩がしそうだった。
「元々ぼくも探してたんだぞ。世界を滅ぼす方法。だから叶えるのが一つ。同じ目標を掲げる同士として共有するのが一つ。願いを一つにしたいきみの心情との整合性が取れるな。方向性が一致してて嬉しいぞ」
「
……
かわいくて可愛くない事を言いますね」
ふふ、と微笑みながら、するりとぼくの頬に手を伸ばす。温かい手だった。人間の手と全く同じだからか、いつも体温があった。自分の、誰かが白い事を除けば烏の羽と全く同じだと言った、腕とは似ても似つかない。
そのままもちもちと頬を揉まれて、今の自分ではこういう触れ合いもままならないと改めて認識する。
彼女は永遠性を損ねることは一方的な不利益だと言った。でも、ぼくにとっては、強ちそればかりという訳ではない。
どうせ永遠性を捨てるのならば、人間にでもなろうか、と考える。やり方は存外、幾らでもある。
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