よつもり
2023-12-09 21:36:27
2496文字
Public 考えたこと
 

キュビズムの話

2023年12月4日にタイッツーでしていたキュビズムの話のまとめです。

キュビズムの話していい?いいよ。
というわけでちょっとキュビズムの話をしたいんですが。

美術館通いが好きなんですがなんせ地方なもので東京のように歩けば美術館がそこら中にあるというような環境でもなく、頼みの県立美術館は車で片道2時間弱という若干遠い立地でして。

それでも我が県の美術館はそれなりに立派なので年イチくらいで大規模な企画展の巡回が来たり、コレクションもそこそこ充実していていい感じなのですが。

という感じなので、頻繁に通えないものの、とりあえず大きい巡回展には顔を出すようにして、小規模な企画展はテーマに興味が湧いたら行くという感じで。

そんな感じでぼちぼち通っていると、段々美術のカテゴリというものが体感として分かってくる。
よく聞くじゃないですか。印象派とか、ナントカ派とか。そういうの。

印象派はあのぽちぽち点々って描いやたつね。モネが有名だよね。キュビズムってピカソとかのあのカクカクしたよくわからんやつよね。シュールリアリズムはあの特徴的なひげのダリの時計が溶けたやつね。とか。

私もちゃんと勉強していないのでその程度なんですが、その程度でも把握できていると、なんにも頭に入っていないときと比べて展示を観る際の解像度がかなり上がるんですよ。

印象派とかキュビズムとか、まあそういう最近の作家の作品は現存する作品の点数が多いからかなと思うんですが、わりと常に全国各地で企画展をやっていて目にする機会が多い。

というか企画展じゃなくても、地方の美術館にピカソとかゴーギャンとかそういう有名作家の作品がふつうにコレクションされていたりするので、常設展でもそういう世界的有名作家の作品をわりと目にすることはあったりする。

(普通にと書きましたが、こういうふうに有名作家の作品が地方に普通にあるというのは相当に豊かなことなのだと思います。)

で、まあ。不勉強であまりよく分かっていないなりにも観ていくとですね、たまにピンとくる瞬間がある。

例えば私がキュビズムを感覚的に「わかった!!」できたのがこの絵なんですが。
ジャン・メッツァンジェという人の「首飾りを着けた若い女」という作品です。


ピカソとかのとことん突き詰めたキュビズムよりはまだ優しい感じがしますよね。まだ人間の形を保っていますから。でもこれもたしかにキュビズムの手法で描かれている。じゃあキュビズムの手法ってなんぞやって感じなんですが。

特に注目してほしいのがこの絵の、私達から見て右肩のあたりなんですが、不自然に盛り上がって、重ねて描かれていませんか。普通の肩があるべきラインのその上に、角度を変えて二度三度と肩が描かれているように見えるし、横から見た首らしきものも見える。

という描写に気付いたときに、あーなるほどわかったわかったと思いました。なにがわかったかと言うと、こういうキュビズムっていうのは、写真のように一瞬をパチっと切り取ったものではなくて、一枚の絵の中に空間と時間がコラージュされているものなのだと。

今目の前に一人の女性が座っている。その女性を正面から見た絵と、横から見た絵と、後ろから見た絵とというふうに、様々な角度から見た姿を、一枚の画面の中に収めたものなんですね。

で、もっと言うなら、さまざまな角度から観るということは必然的にそこには時間の経過も含まれます。というわけで、その女性をキュビズムの手法で描くとなると、そこでは同時に時間も表現される。

一人の女性を空間的に、時間的に把握したとして、それを画面に落とし込むときに、画面を図形的に区切って、それぞれの図形の中にちょっとずつ違う角度や時間軸にあるモデルを描きこんでいくということなんですね。

漫画のコマ割りにも似ているかもしれません。一枚の画面の中にコマを割って、そのコマごとに時間と空間の有り様は変わっていくじゃないですか。キュビズムというのはおおよそあれと同じことをやっているのだと思います。

だからキュビズムってぱっと見とても奇抜で、人は人の形をしていないし、なんだか「変」な絵なんですが、その画面の意図が「一枚の絵の中に時間を空間を同時に表現する」っていうところにあると理解できると、とたんに「わかる」ようになるのが不思議なんですよ。

という感じで、その目の前にある絵は何をどう表現したくてその形になっているかという点が理解できるといきなり「わかる」がやって来るので、美術鑑賞というのはそういうのがめちゃ面白いんですよね。

これなんかは、古典的によくある「テーブルに食器とかフルーツ盛りとか布とかある絵(静物画)」のキュビズムバージョンだと思うんですが、これもよく見るとカップだとかボウルだとか多分バターケース?なんかが色々な角度から描かれているのがわかります。これもキュビズムの手法がわかりやすい絵だと思います。


で、もう一つ付け加えるのなら、時間と空間を一枚の絵の中に図形的に表現したものを言い表すことばが「キュビズム」なのがすごく的を射ているなと思っていて、

私達から見た画面は平面ですが、その平面の中に立体を表現している。だからそれはshapesではなくて、立体的なcubeというわけなんですね。という意味での「cubism/キュビズム」となります。

っていうのが私がさっき添付した絵を見て導き出したキュビズムの理解だったのですが、合っているかなと思ってウィキペディアを見に行ったら大体同じことが書かれていたので当たりでした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%A0

これは私の勘が鋭いとかそういうことではなくて、絵の意図がきちんと定まっていて、その絵をじっくり見て推理していけば自ずと表現されていることと、その表現のために使われた手法が見えてくるので、それを言語化すると大体同じ言葉で言語化されるってやつです。

キュビズムの話おわり。