ぽふむん
2023-12-06 21:38:53
4171文字
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出られない部屋


べべん

琵琶の音とともに奇妙な部屋に二人はいた。

「なんですか?ここは」
「うーん、鳴女ちゃんのイタズラ・・・・かなぁ?おーい、鳴女ちゃん、ここなぁにぃ?」


───無惨様の無聊を慰めることも我らの仕事にございましょう───

どこからともなく女の声がした。この声の主が鳴女とやらか。

鬼の首魁 鬼舞辻の暇つぶしに付き合えと・・・

しのぶのこめかみに怒りのあまり青筋が浮かぶ

「ふぅん・・・まぁ無惨様の指示となればいたし方ないのかぁ。で、無聊を慰める・・・具体的にどうすれば?」

この子の毒は簡単に分解できたし・・・
まだ顔の半分が赤黒く爛れているが、それもじわじわと回復し始めている。

にたぁっ

小馬鹿にしてるのかと思うほど、不敵に笑うから腹が立つ。
しのぶは拳を握りしめる。

そのとき、どこからともなく非常に味のある墨書の扁額が現れた。

そこには、こう書かれていた。

『口付けのみで相手をその気にさせた方が勝ち。ただし首から下お触り禁止』

はぁ?と言いたげな顔をする上弦の弐。



「これが・・・・噂に名高い、お題をこなさないと出られない部屋・・・というやつですか」
しのぶは腕を組んで考え込んだ。

もしこなさなければ、この鬼に食われるか、自分がこの鬼を仕留めるか、もしくは、永遠にこの男と二人きり。
まっぴらごめんだ。

そこで、ふとしのぶは気になった。

密室・・・・ということは

厠に行きたい時はどうすれば?

鬼は排泄するのだろうか?どちらにしろ人間であり女である自分には死活問題。
膀胱炎は勘弁願いたい。

いや、耐えきれずお漏らしとか・・・絶対無理。



ぷっ

吹き出す声が聞こえた。
面白くて仕方ないというように、くつくつと笑っている。

「君、心の声ダダ漏れてるよ。まぁ、確かにそうだね。さっさと命題こなして出てしまおう。口をくっつけるだけだ。どうという事ない」
こともなげに言うが、しのぶはパニック状態とならざるを得ない。

はぁああああ?

こいつとぉ?口付けぇええ?

その気にさせるというのは?どういうこと?そういう事?

仮にそうなったとして、鬼舞辻と誰かもう一人。見てるんでしょ?

「だから、君心の声漏れてる。まぁ、どうにかなるでしょ」

思った以上にいい加減な鬼だな

「俺、真面目だけが取り柄なんだけどなぁ」

よいしょ

どすん、と音がしそうな勢いで部屋の真ん中にある大きなソファーに座り、自分の隣をぽすぽすと掌で叩く。

「さ、おいで」

ぞくんっ

何故か下腹部が疼く気がした。

おずおずと近寄り隣に座る。

「で、どうしよう。俺からする?君から?」

は?
なにを・・・・あ、あぁ、接吻?

「したことないかい?」
にやぁっと笑うから頭に血が上った。


「それくらいあります!では、私から・・・・行きます」

へぇ・・・
先程までより一段低い声が聞こえ、一瞬空気が冷えた気がしたが、気にしている暇は無い。

しのぶはごくんと唾を飲み込むと 童磨の首に腕を絡め、一気に唇をくっつけた。

売り言葉に買い言葉でそうは言ったが、実際のところ、しのぶにそのような経験値はない。文献で読んだだけの知識。

───確か・・・こうするのよね・・・あ、こいつ、鬼のくせにいい匂い───

唇をくっつけるだけの、児戯とも言えないような拙いもの。

しばらく甘んじて受けていた童磨だったが、ふっと吹き出した。両腕をソファーの背に大の字になるように広げ余裕の姿勢。

「した事・・・・本当にあるのかなぁ?口付けだけでその気に・・・これじゃ埒が明かないね」
呼気が唇に触れる

「ひぁっ・・・・ふぅ・・・なら、これは」

その感覚に悶えながらしのぶは次の手に出る

───えっと・・・唇を舐めるのよね??───

舌先でぺろぺろと舐めて見る

ピクリとも反応しない男に苛つく。

「ふふ・・・おぼこ娘みたいだね・・・頑張れぇ」

馬鹿にして!!巫山戯んな

童磨の背後の背もたれに手を突き、何度も何度も唇を合わせ、舌先で唇を舐める。

なのに

───なんで反応しないのよ、バカ。本当に腹が立つ───

これだけ想いをぶつけてるのに、全くビクともしない。

何故か下半身がうずうずしてくるのを感じ屈辱感に目頭が熱くなる。


───くそっくそっ反応しろよ。バカ───

しのぶの表情を薄目を開けて楽しそうに見ていた童磨の瞳がきらりとひかり、柔らかく弧を描いた。

「じゃあ、今度は俺かなぁ」
右腕で優しくしのぶの頭を抱える

「首から下を触らなきゃいいんだね?」

ぴんぽーん

正解と言うように間の抜けたチャイム音が鳴る。
それを聞くと、ふっと微笑み

「正解・・・・みたいだね」
耳に唇を寄せ、ちゅっと大きな濡れた音を耳元に響かせた。

「ひゃぁ!」

ちゅっ・・・・ちゅく・・・ちゅ

耳元に水音が響く度にひゃんひゃん悲鳴を上げる。

「ここから・・・・出たいんだよね・・・」
耳元で囁き髪の毛をそっと撫でる。

唇が耳から離れた。

耳が熱い
しのぶは自分の手で耳を抑えた。

「ね・・・しのぶちゃん。俺を見て・・・そう 真っ直ぐ」

鼻の頭に鼻の頭をくっつける。視線が真っ直ぐ合う。

存外に綺麗な虹の瞳。

───綺麗な・・・・瞳───

陶然と見つめていると、鼻の頭をスリスリとすりあわせ

ふぅっと唇に息がかかり

唇に触れてくると思いきや、顔が離れ

額、まぶた 頬、唇の端

軽く触れるだけのものが落ちてくる。

そう思っていたら、次はリップ音を立ててきた。

ゾクゾクする。

寂しい

抱きしめて

あぁ、首から下はダメなのか。

いや、落ちるものか

薄目を開けて睨みつけてみると、瞼を閉じた男のまつ毛が見える。

───まつ毛・・・・長い。こうして見るとなんて優しい顔なんだろう───

唇が合わせられた。
下唇を唇で食み、吸い上げ、舌でねっとりと舐め上げ 包み込むように吸い上げる。

ぷるんっ

しのぶの下唇が揺れる。
顔の角度を変え、水音を立てながら何度も、何度も合わせ舌をねじ込ませ、しのぶの舌を追う。

「逃げないで・・・舌出して・・・ここから出られないよ」

素直に舌を出すと大きく厚く長い舌に捉えられる。

はぁ・・・ふぅ・・・ぁ

頭を撫でられ、耳元をくすぐられ

だめ・・・ダメだけど

「ぁ・・・・へ・・・ん・・・アソコが・・・へんだよぉ」

「ん?」

童磨の視線が扁額に向く
書かれていた文字がすうっと消え変わる

「見て・・・・しのぶちゃんの負け・・・だって」

続きが浮き出てきた。

敗者しのぶは勝者童磨にご奉仕する。何でも言う事を聞いて満足させなくては出られない部屋

「だって・・・と、言うことは、もう首から下も触っていいのかな?しのぶちゃんどうする。嫌ならやめておこうか・・・いつまでも出られないけど」

「それで良い訳ないでしょう!」

しのぶの反撃が始まる。

童磨のピッタリしたシャツをまくり上げ胸元をキツく吸い上げる。
掌を這わせるが・・・・

全然余裕の表情をしている
本で見た、学んだ・・・これじゃ足りない?・・・

「そんなにベッタリ触るからだよ。ほら。こうするんだよ」
指先で触れるか触れないか、ギリギリの柔らかいタッチで胸先をつんっと突き、丘陵を辿る。
「やっ・・・ぁ・・・はぁ」

脇腹、しりも同じく

そうして、衣服が緩められて行く。
隊服の前がはだけ晒しが見える。

「きゃぁ!!」

「緩めようね」
すっと晒しが緩められると、外気に触れた肌がすっと粟立つ。

「ひっ・・・・や・・・」

「怖くないよ。出るため・・・頑張ろうね」

ちゅうっ

鎖骨に唇を寄せられ強く吸い上げられる

「ん?」

童磨は自らの舌がヒリヒリ痛むことに気がついた。
溶けている。
これは??

「ふっ・・・・形勢逆転・・・ですね」
はだけられた胸を隠しながらしのぶはほくそ笑んだ。

「いかがですか?私の肉は。私はお前を倒すため、自らの身体を一年以上かけて毒に染め・・・・この肉体を味付けしてきたんですから」

目を見開いて無言で聞いていた童磨の瞳が輝き、頬が染まる。

「俺の為に・・・・肉体を味付け?」

しのぶは気づいていない。この味付けと言う淫靡な響きに。



ほんの少しだけ唇を吸い唾液を交わしただけ。

効果を発揮するには足りないようだ。
分解、再生を始めている。


「わ・・・・・ぁ。わぁーーーなにこれ、なんだろこれぇ。胸がドキドキするぅ」

童磨がキャッキャと声を弾ませ「恋」だなんだとのたまい出した。


「ねっ、もっとお話しよっ。ね、ネェ。わぁーーー」

しのぶをぎゅうっと抱きしめた。

「出られない部屋 って最高じゃない。ずっとこうしていないかい?ね、ねぇ、良いかなぁ?ねぇ」

いっぱいいっぱいお話しようよ。

まるで十にも満たない子どもが話しているような、無邪気な


空っぽだった。
どれだけ食べても空っぽで満たされなかった。
まだ足りない
まだ足りない

もっと

もっと
どんな女の子も心を満たしてくれなかった。

なのに、こんなちっぽけな女の子が


自分を真正面から見て、俺のために調味して食べられるために特攻してきた女の子

「ねぇ、鳴女ちゃん。この子厠の心配してたけど大丈夫?行きたくなったら行かせてあげられる?

───・・・・最低限の設備はございます───

「無惨様ぁ、この子飼っていいですかぁ?ちゃんと毒抜きしてお世話しますからぁ!!ねぇ、ねぇ」

───・・・・構わん。ちゃんと最後まで面倒見るんだぞ───

ちゃきん


どこから出てきたのか首輪がつけられる。そんな人としての尊厳を無視したような行為と裏腹に優しく抱きしめ頭を撫で頬擦りしてくる鬼。

一方しのぶは

『 ずっと二人きりで・・・抜いて・・・お世話され・・・・イキたくなったらイカされて・・・首輪・・・・シツケ調教?』

とんでもない妄想で脳がパンク寸前になっていた。