sguearth
2023-12-06 20:47:58
4268文字
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蒼蜂のレゾンデートル

合同誌第三弾?用
自分なりにライノ生きてたらなルート

そう、「あたし」はここには居ない、居てはいけない「存在」のはずだ


今日も何処までも蒼い空とまるで無限に澄み渡る海面の上空をあたしと大切な仲間達は飛んでいた


口を開けば嫌味ばかりだけど実は誰よりも責任感の強い尊敬するエメラルドグリーンの先輩といつも元気いっぱいだけど時々凄く守って上げたくなるサンライトイエローの同期と一見頼りなく儚く見えるけど実はあたし達の中で一番誇り高いクリムゾンレッドの獅子
どれもこれもかけがえの無い大切な仲間達


「そろそろザイの勢力範囲内ですよ、私達の存在が向こうのレーダーに引っ掛かり始める頃です、いつも通り私が後方で電子戦でバックアップ、指揮統制をしますから皆さんエンゲージの準備を」


老体に鞭打って頑張っている海軍の大先輩に答えるべくあたしは自分と、皆の緊張をほぐすべくなるべく明るく答える
「オーケーオーケー、特に地上攻撃任務は任されて」
無線の向こうからあたしだけの秘匿回線でため息と共に大先輩RF-4EJ-ANMファントムの愚痴が聞こえてくる
「本当頼みますライノ、何処かの黄色は協調性ゼロで派手な空戦しか興味がないですしグリペンは搭載量が小さい上に慧さんの為に無理はさせられませんし」
内心思わず苦笑する、毒舌を履きながらも皆を心配する様子が眼に浮かぶ
「あーもう!イーグル早く戦いたい!ちまちました地上攻撃はまかせたからね!ばばーんどどーんと空中のザイは皆あたしがやっつけるから!」
「慧、そろそろEPCMが激しくなってくる、準備をして」「ああ、いつものようにパッパと片付けて皆でラーメン食べに行こう」
頑張る、そうしたら餃子とヨーグルトのおかわりも」「解ってる解ってる」
いつものように皆で軽口を叩きあう大切な時間、もちろんこの後の戦いは緊張の連続だけどあたしはこの時間がとても楽しくて愛おしい、その後の皆と一緒の時間も

ある訳がない、少なくともあたしはここに居てはいけない、ここにはいない「存在」の筈だ


そうあたしは春先、上海の空港でまんまと自分の心の隙間をザイに乗っ取られて暴走、ほぼザイと同じ存在に成り果てた所をグリペンJAS-39D-ANMと交戦状態に陥りキャノピーに短距離空対空ミサイルの直撃を食らって撃墜された、筈、だった
「彼女」はそこらへんは全く持って躊躇いがない、ある種の敬意を持って全力であたしを撃った
そこに怒りや憎しみは持っていない、むしろ感謝すらしている


あああたしは死ぬんだいや正確にはアニマにしてザイだからF/A-18Eという機体が損壊してその概念が「元に戻る」のか
意識は朧気になり全ての生みの海、アンフィジカルレイヤーに揺蕩い、溶け込もうとしていた、そこまでははっきりと「覚えて」いる
なのに
『良かった、眼が覚めたのか』
『心配したんだぞいやすまない私が悪い、そう悪かったんだ』
『慧、ライノが眼が覚めた、お医者さんが無事だって!』


あり得ない、そう心が確信している、特にウィリーあんた誰だよあんたがそんなに優しい訳がないだろ偽物じゃないの?
疑問を感じている余裕もなくあたしはあっさり退院してついでにドーターもまるで戦闘などなかったと言わんばかりに新品同様に修復されていた
しかも部隊再編成で米海軍から日本独飛への配置転換と来たものだ
あり得なさ過ぎて笑えてくるあたしアメリカ虎の子のF/A-18E-ANMだよ?
いやそもそも最初からザイだのアニマだのなのだ
今更物事にあり得ないという事は、ない、か


それから後の日常はまるで夢のようだった
ロシアからSU-47-ANMが来て一緒に共闘した後彼女はF-2-ANMと共に那覇に配備されそこで頑張っている
フランスラファールANMは空母シャルルドゴールの専属として自らの部隊を率いるようになり
いろいろ誤解があったとはいえバーバチカという強力な仲間も出来た
彼女達の活躍でユーラシアの戦線は少しずつ抑え込み始めついには本拠地、「球殻」のあるタクラマカンに届こうとしている
プライベートも実に順調で夏は皆で山やプールに行ったり秋はハロウィンが楽しかったな
本当夢のような毎日と日常、


いい加減にしろクソシナリオが、どんな三流脚本家でももう少しピンチと言う物を演出するだろう、極端なストレスフリーは達成感もまた虚しいものだ


アンフィジカルレイヤーに溶け込みかかった時、あたしは間違いなくこの世界の真実の一端を垣間見た、この世界は周回をしながら幾度となく悲劇が起きていると、そしてその際人間も、あたし達アニマも綺麗に記憶が消えてまた1からやり直す、その時唯一の記憶を持つ特異点が時間遡行プログラムを持つJAS-39D-ANMのみな事を
だが何かの奇跡と言っていい事象が起こってあたしもまたイレギュラーになった、らしい
そして何周目か解らない世界の空を記憶を保ったままこうして生きて空を飛んでいる
考えれば考えるほど解らなくなる、生きのこってしまった理由は?なぜあたしは記憶を保ったままでいる?こうして「生かされて」いる理由はなに?
思考は堂々巡りとなりこの先待ち構えているであろう「繰り返し」の悲劇の終末に今から吐きそうになる程気分が重くなる


「ライノ!EPCMによる妨害を受けています!中距離AAMと地対空ミサイルのいい的になりますよ!至急カウンターを!」
慌てて思考を振り払いカウンターとなるEPCCMを全開にする、ロックオン警告が小さくなっていって思わずため息が出る
秘匿回線でRF-4EJ-ANMが呼び掛けて来た
「ボーっとしてどうしたんです?イーグルやグリペンじゃあるまいしあなたらしくもない」
「ああははゴメンゴメンちょっと考え事をしててさ」
「本当珍しいですね、あなたは他の駄目二人組と違って戦闘中のイージーミスはしない方だと思っていたんですがイーグルよろしくスコア稼ぎに夢中になりましたか?もしくはグリペンのように帰投後の夕食の内容でも考えていたとか」
相変わらず容赦のない酷い事を言う、あたしは苦笑しながらそれでも何とか答える
「んーそうじゃなくて、何というか」
一端言葉をおいて、
ちょっと自分の存在意義てやつをさ」
想像通り無線の向こうから呆れた反応が帰ってくる
なんですかそれは、慧さんのような思春期の人間じゃあるまいし、アニマがいわゆる厨二病なんて冗談も程々にしていただきたいんですが」
アニマそのものがある意味厨二病みたいな物だけどね、あたしは内心苦笑しながら反論はやめておいた


そうだ、今更悩んでいてもしょうがない、事実として「記憶」を引き継いだまま生きてこの場にいる、それが今のあたしの全てだ
だとしたら何の意味がある?またリセットされて虚しい努力になるだけなのでは?


いや、ここまで来たら考えるのを辞めろ、その意味を活かせ、武器にするんだ、
その気になれば電子戦機EA-18Gに転用出来る程のアヴィオニクスと何より「前」の記憶をフルに利用して戦場全体を把握しろ、皆が気付かない気付けない所に気を配るんだ
今こんな真似が出来るのは他の誰でもない
このあたしだけだ、JAS-39D-ANMにだって無理だろう


ひょっとしたらこれでさえ決まりきった予定調和の運命の輪の中なのかも知れない、足掻いた所で結局いつもどうりの悲劇が待ち構えているのかも知れない
だけど、それでも、足掻き続ければ、いつかは、今度こそは、必ず、
知らず知らずにNFIパネルに触れる手に力が入り汗が滲み呼吸が早くなる


「ライノライノ、」
「え、あ、な何?」
「また集中が入り過ぎて周りが見えていませんよ、本当今日は一体どうしたんです?」
「ああはは、ごめんごめん、ちょっと、さ」
せっかくだ、あたしは兼ねてから思っていた事を正直に打ち明ける事にした
この任務が終わったら配置転換を申請しようと思っててさ」
ファントムの声が沈黙する
「なんですか急にいきなり、忠告しておきますがそれフラグてやつですよ、典型的な、まあ一体何処に配備されたいんです?」
「今度新設されるアメリカ合衆国宇宙軍通称ガーディアンズにさ、」
一瞬ファントムが虚を付かれる、だけど今度はかなり重い口調で言ってくる
やはりあなた、いいえ、アメリカも懸念しているのですね、いよいよ追い詰められたザイが今まで禁じ手として来た大気圏外からの攻撃を仕掛けてくる可能性を、さらには直接攻撃だけではなくEPCMを応用したサイバー戦を仕掛けてくる可能性もあると」
確かに第一にはそれがある、厄介な事に「記憶」とやらでその可能性はかなり高く、そしてこの任務に一番適任なのは元米軍所属の機体的にも演算能力的にもそして「イレギュラー」的にも間違いなくこのあたしだろう
だけど、この願いの根底は、もっとシンプルな物だ


「あたしは海軍機、いつかウィリーが見せてくれたコロラドロッキーの星空がどうしても忘れられなくてね、新しい海の『星の海』へ航海をしたくなっただけさ」


想像通りキョトンとした空気が漂ってくる、あーあたし今絶対痛い奴だと思われた
だけど、かえってきた答えは苦笑混じりとはいえ想像以上に優しかった
それは結構ですがあなたは上昇率最悪の『ライノ』ですからね、これから厳しいダイエットをしてくれなくては困ります」
「解ってる、今度の整備でウィリーにせめて艦載機構を外してくれるのを頼むとするよ、『ダイエット』しなきゃね」
お互い笑いながらそろそろ迫りくる目の前の脅威に集中し始める
閉鎖されたキャノピーの中だから本当はそんな筈は無いのに海風を感じ始める

これから先の道程も決して平坦ではない、何度も苦難と絶望が待ち受けているだろう
だけどそれでも諦めずに飛び続けたらいつかきっとたどり着けるかも知れない
あの無限に広がる蒼い空と海の果てに


後書き
我ながら後半ポエマー
しかし書いてて夏海先生が中盤以降ファントムをサブヒロインにした理由が解ったと言うか
本当動かしやすくて会話に絡ませやすかったです
元ネタは知る人ぞ知る小冊子版ハロウィンライノですね
生きている時間軸が違う、ひょっとしたら夏海先生も完全ハッピーエンドを望んでいた所があったんじゃないかなて
トップガンマーヴェリックと同時期にライノSS提出だった事は幸運な偶然でした